ツーバイフォー工法は耐震性が高い?耐震補強の必要性や耐震等級を解説

地震大国である日本で家を建てる際は、施工方法による耐震性能の違いを理解することが重要です。「ツーバイフォー工法(2×4工法)」は、北米発祥の木造建築工法として日本でも広く普及しており、床・壁・天井の6面体(モノコック構造)で建物を支えるのが特徴の工法です。

当記事では、ツーバイフォー工法の特徴や在来工法との違い、耐震性の仕組み、メリット・デメリットについて詳しく解説します。ツーバイフォー工法は耐震性の高さが評価されていますが、在来工法と比較して異なるポイントもあるので、施工方法を検討する際の参考にしてください。

 

1. ツーバイフォー工法とは?

ツーバイフォー工法(2×4工法)とは、北米発祥の木造建築工法で、「2×4インチ(約38mm×89mm)」サイズの角材を使用して建築することからその名がつきました。「木造枠組壁工法」とも呼ばれ、床・壁・天井の6面体(モノコック構造)で建物を支えるのが特徴です。

ツーバイフォー工法では、建物を面で支える構造となるので、地震や台風などの外力に対して強い耐性を持ちます。特に、地震時の揺れを分散させる働きがあり、耐震性に優れているとされています。

また、施工の標準化が進んでおり、品質のばらつきが少ないという特徴もあります。欧米では一般的な住宅建築の方法として広く普及しており、日本でも耐震性の高さやコストパフォーマンスの良さから注目されています。

 

1-1. 在来工法との違い

在来工法(木造軸組工法)は、日本で古くから用いられてきた木造建築の工法で、柱や梁を組み合わせて骨組みを作り、建物を支える「軸組構造」が特徴です。空間の取り方を自由に選べるので、間取りの自由度が高く、増改築がしやすい利点があります。一方、ツーバイフォー工法は、「面」で建物を支えるモノコック構造を採用しており、揺れを分散しやすく耐震性に優れています。

また、在来工法は設計の柔軟性がある反面、施工品質が職人の技術に依存しやすい傾向があります。工場でパネル化した部材を使用するツーバイフォー工法とは異なり、どの工務店に頼むかで品質が異なります。在来工法で家を建てる場合は、在来工法について正しい知識と技術を持った工務店を選ぶ必要があります。

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2. ツーバイフォー工法の耐震性が高いと言われる理由

ツーバイフォー工法が耐震性に優れているとされる理由は、モノコック構造(6面体構造)により地震の揺れを分散できるためです。面で建物を支えているので、地震の際は力を建物全体で受け止め、分散させられます。

また、耐力壁の多さも耐震性を高める要因の1つです。ツーバイフォー工法では、壁が構造体として機能するため、建物のねじれが生じにくく、倒壊のリスクが低減します。さらに壁と床が強く接合されており、横揺れにも耐える構造になっています。

 

3. ツーバイフォー工法のメリット・デメリット

ツーバイフォー工法には、耐震性以外にも多くのメリットがあります。

  • 工期が短い
    ツーバイフォー工法ではパネル化された部材を現場で組み立てるため、作業を効率的に行え、工期の短縮が可能です。在来工法よりも短い期間で建築できることが多く、工事に必要な人件費の削減にもつながります。
  • 気密性・断熱性が高い
    面と面をつなぎ合わせるツーバイフォー工法の家は、気密性が高くなります。隙間が少ない構造のため、冷暖房効率が良く、省エネにも効果的です。特に寒冷地では気密性の高さが室内環境の快適性に直結するので重要です。
  • 耐火性に優れている
    構造用合板などの木材は、燃焼しても表面が炭化するのみで、内部まで燃え広がりにくい性質を持っています。耐火性能が高いと、火災保険料が安くなるメリットもあります。

一方で、下記のようなデメリットもあります。建築時の目的や将来的なプランを考慮しながら、メリットとデメリットを比較検討しましょう。

  • 間取りの自由度が低い
    ツーバイフォー工法は壁が建物の構造を支える役割を持つため、壁の位置が固定され、自由な間取り設計が難しくなります。特に広い空間を確保する際には補強が必要になり、設計時に制約が発生することがあります。
  • リフォーム・増改築が難しい
    構造上、壁の撤去や間取り変更が難しい点は、増築やリノベーションの難しさにつながります。開口部の拡張や間仕切りの移動は在来工法であれば簡単にできますが、ツーバイフォー工法では構造への影響を考慮する必要があります。
  • 施工できる業者が限られる
    ツーバイフォー工法は品質のばらつきは少ないものの、施工するには専門的な技術が必要です。在来工法に比べて対応できる建築会社が少なく、選択肢が狭くなる場合があります。

 

4. ツーバイフォー工法の耐震等級

ツーバイフォー工法の住宅は、耐震性が最高レベルである耐震等級3に相当するほど強いと言われています。

耐震等級は、「住宅性能表示制度」に基づき耐震性能を数値化し、建築物の安全性を客観的に評価するために設けられた基準です。耐震等級は以下の3段階に分類されます。

等級 具体的な性能
等級3 極めて稀に(数百年に一回)発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度
等級2 極めて稀に(数百年に一回)発生する地震による力の1.25倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度
等級1 極めて稀に(数百年に一回)発生する地震による力に対して倒壊、崩壊等しない程度
=建築基準法がすべての建物に求めている最低基準

引用:国土交通省「耐震性能を等級で確認して、安心の住まいづくり」引用日2025/03/05

ツーバイフォー工法では、適切な設計を施せば耐震等級2や3に相当する耐震性を持つと言われています。ただし、ツーバイフォー工法の家すべてが耐震等級3にあたるわけではなく、建物の構造計算や使用する耐力壁の種類などにより耐震等級が異なるため、事前に工務店に確認しましょう。

 

5. ツーバイフォー工法の家も耐震補強が必要?

ツーバイフォー工法の住宅は耐震性に優れていますが、築年数が経過すると劣化が進み、耐震性能が低下することがあります。特に、シロアリ被害や湿気による木材の腐食、度重なる地震や台風の影響を受けた場合、当初の強度を維持できなくなる可能性があるため、耐震補強が必要です。

シロアリは木材を食害し、柱や壁の強度を大幅に低下させます。また、湿気による木材の腐食も耐震性を低下させる要因の1つです。ツーバイフォー工法の住宅は気密性が高く、換気が不十分だと壁内部に湿気がこもり、木材が劣化することがあります。特に床下や水回り付近はシロアリの被害や湿気による木材の劣化が発生しやすいので、定期的な点検が欠かせません。

 

6. 家をリノベーションするときはまず現状を把握しよう

ツーバイフォー工法の家をリノベーションする際は、まず耐震診断を行い、建物の状態を正しく把握しましょう。ツーバイフォー工法は耐震性が高いとされていますが、築年数が経っていると耐震性能が当初より低下している可能性があります。

特に、築20年以上の住宅では建築当時の耐震基準が現行基準と異なる場合があるため、リノベーション前に耐震診断を受けるのがおすすめです。リノベーション計画の前にしっかりと診断を受け、構造材の劣化状況や、現行の耐震基準を満たしているかどうかを確認し、必要に応じて耐震補強を行いましょう。

また、ツーバイフォー工法の家をリノベーションする際、壁を撤去したり、大きな開口部を設けたりすると耐震性能に影響が出る可能性があるので、構造のバランスを考慮した耐震補強が必要です。見た目のデザインや機能性を向上させるだけでなく、安全性も確保するために、リノベーション前には必ず耐震診断を行い、適切な補強計画を立てましょう。

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まとめ

ツーバイフォー工法は、耐震性・気密性・施工品質の安定性などが優れた工法で、特にモノコック構造による揺れの分散効果や、耐力壁の多さが耐震性を高める要因となっています。

一方で、在来工法と比べると間取りの自由度が低く、リフォーム・増改築の制約がある点には注意が必要です。ツーバイフォー工法の住宅をリノベーションする際には、耐震診断を行い、適切な補強を施すことが大切です。また、築年数が経過すると、シロアリ被害や湿気による木材の劣化が耐震性の低下につながるので、定期的な点検を行い安心して暮らせる住まいを維持しましょう。

家づくりを考える際は、ツーバイフォー工法のメリット・デメリットを十分に理解し、ライフスタイルや将来のリフォーム計画に合った工法を選ぶことが大切です。