日本は地震大国と呼ばれるほどに地震の多い国で、地震に備えての備品の用意だけではなく、家自体の耐震性も十分に高めておくことが重要です。しかし、耐震補強とはぐたいてきにどのようなことをするのか、またどれくらいの費用がかかるのか分からず、住宅の耐震性に不安を感じても行動に踏み出せないという方もいるのではないでしょうか。
当記事では、耐震補強とはなにかという基本的なところから、耐震補強工事の内容と費用の目安などについて解説します。ぜひ耐震補強工事をするかを選択するためのヒントにしてください。
1.耐震補強とは?
耐震補強とは、地震による建物の倒壊や損壊を防ぐために行われる工事や対策のことです。主に建物の構造的な弱点を補強し、耐震性能を向上させることを目的としています。
具体的には、柱や梁の補強、壁の増設、基礎部分の強化などが含まれます。地震大国とされる日本では、耐震基準が改定されるたびに建物の耐震性が見直されるため、特に旧耐震基準の建物に対する耐震補強が重要視されています。建物の安全性を確保し、住む人の命や財産を守るための大切な工事といえます。
1-1.耐震補強が重要な理由
耐震補強が重要とされるのは、地震大国である日本において、建物の安全性が人命を左右するためです。1981年以前に建てられた建物は旧耐震基準で設計されており、現行基準を満たしていない場合が多く、地震発生時に崩壊リスクが高いとされています。
建物の倒壊は人命を奪うだけでなく、財産損失や避難生活の長期化といった問題を引き起こします。耐震補強を実施することで、建物の安全性を高め、居住者の命を守るとともに、地震後の生活再建をスムーズに進められる環境を整えることができます。
2.耐震補強工事で行うことと費用の目安
耐震補強工事では、柱や梁の補強、壁の追加、基礎部分の強化など、建物全体の耐震性を高める作業が行われます。一軒家の場合、費用は100万~300万円程度が目安であり、補強範囲や施工内容によって異なります。
以下では、具体的な工事内容とその費用について詳しく解説します。
2-1.耐震診断をする
耐震診断は、耐震補強工事を始める前に建物の安全性を確認する重要なプロセスです。専門家が柱や梁、基礎部分の強度を調査し、建物全体の耐震性能を評価します。この診断を通じて、必要な補強箇所が明確になり、効果的な工事計画が立てられます。
診断費用は木造住宅の場合で10万~40万円程度が相場ですが、自治体の補助を利用することで負担を軽減できる場合があります。耐震診断を行うことで、建物の弱点を見極め、安全性を高めるための適切なステップを踏むことが可能です。
2-2.壁の増設をする
壁の増設は、耐震補強工事の中でも重要な作業で、耐力壁や筋交いを追加することで建物の耐震性能を高めます。この工事により、建物全体の強度が向上し、地震時に揺れを効果的に分散できます。壁を増設する場所や設置方法は建物の状況に応じて決定され、耐震診断の結果を踏まえて計画されます。
工事費用は規模や内容により異なりますが、1枚の壁ごとに20万~50万円が一般的な目安です。壁の増設は、建物の安全性を確保するための基本的な工事です。
2-3.基礎の補修をする
基礎の補修は、建物の安全性を支える重要な耐震補強工事の一つです。基礎部分にひび割れや損傷がある場合、地震時の建物の揺れに耐えられなくなる可能性があります。この補修では、ひび割れの充填や基礎の補強材の追加、鉄筋の補強などが行われます。
補修費用は建物の規模や損傷の程度によって異なりますが、50万~100万円程度が一般的です。基礎の補修を行うことで、建物全体の耐震性を向上させ、長期的な安全性を確保することができます。
2-4.屋根を軽量化する
屋根の軽量化は、建物の重心を下げ、地震時の揺れを軽減するための耐震補強方法の一つです。従来の瓦屋根は重量が大きく、揺れを増幅させる原因となるため、軽量な金属屋根やスレート材への交換が推奨されます。建物全体の耐震性が向上し、地震による被害を軽減できます。
屋根材や施工範囲によりますが、費用の目安は50万~150万円程度です。屋根の軽量化は、特に築年数の古い建物に有効で、構造全体の安全性を確保するために効果的な工事です。
2-5.家の土台や柱に金具を設置する
土台や柱に金具を設置する工事は、建物の接合部を強化するための重要な耐震補強です。地震時には、柱と土台の接合部分が破損することが多いため、専用の耐震金具で固定することで揺れによる建物の損壊を防ぐことができます。家の土台や柱に金具を設置する補強方法は、柱や梁の強度を高める効果があり、比較的低コストで実施可能な点が魅力です。
費用の目安は、金具の種類や設置箇所の数によりますが、20万~50万円程度です。金具の設置は、耐震性を向上させるだけでなく、建物全体の安全性を維持するための基本的な工事であり、特に地震の多い地域では欠かせない対策といえます。
3.耐震補強工事で利用できる補助金制度の種類
耐震補強工事を行う際に注目したいのが、各自治体が提供する補助金制度です。補助金制度は、費用の一部を自治体が負担することで、個人が耐震補強工事を実施しやすくする仕組みです。特に、古い建物や木造住宅に対して支援が行われるケースが多くあります。
以下では、利用できる補助金制度の具体的な種類について詳しく解説します。
3-1.地方自治体の補助金制度
地方自治体の補助金制度は、耐震補強工事を行う際の費用負担を軽減するために提供されています。具体的には、耐震診断費用や工事費用の一部を補助する制度があり、条件を満たせば大幅な支援を受けられることが特徴です。
たとえば、大阪市では「住宅耐震改修補助制度」を実施しています。令和6年の補助金制度の条件では平成12年5月31日以前に建築された住宅を対象に、耐震診断や耐震改修工事の費用を補助しています。耐震診断や耐震改修設計、耐震改修工事など各種補助が出るため、住宅の耐震補強における金銭的な大きな負担を減らすことができるでしょう。なお、自治体によって補助の条件や補助申請の受付時期などが異なるため注意が必要です。
3-2.国の補助金制度
国の補助金制度は、地方自治体の制度と並び、耐震補強工事を支援する重要な仕組みです。たとえば、国土交通省が推進する「住宅・建築物耐震改修事業」は、古い建物の耐震診断や耐震改修工事の費用を一部補助する制度です。住宅・建築物耐震改修事業では、昭和56年以前に建築された木造住宅や公共性の高い建物を対象に、工事費用を一部補助されることがあります。
出典:国土交通省「住宅・建築物耐震改修事業 (住宅・建築物安全ストック形成事業)」
国の補助金を活用することで、耐震工事の費用負担を軽減し、地震に強い建物の実現が可能となります。詳細は国土交通省や関連機関のウェブサイトで確認してください。
3-3.住宅金融支援機構の融資や税制優遇
住宅金融支援機構では、耐震補強工事を実施する際に活用できる融資制度を提供しています。その代表例が「フラット35リフォーム一体型」です。
フラット35リフォーム一体型では、耐震補強工事を含むリフォーム資金を低金利で融資しており、条件を満たせば利用可能です。耐震改修工事を行った場合、税制優遇措置として「住宅耐震改修特別控除」を受けられることがあります。工事費用の10%を所得税から控除する制度で、負担軽減に大いに役立ちます。
まとめ
耐震補強は地震による建物の倒壊を防ぐため、柱や梁の補強、壁の増設、基礎の強化などを行う工事で、日本の旧耐震基準の建物では特に重要視されています。耐震診断を経て適切な工事を行うことで安全性を向上させ、住む人の命や財産を守ります。
費用は規模により異なりますが、全体で100万~300万円程度が目安です。補助金制度や税制優遇、低金利融資を活用すれば費用負担を軽減可能で、地方自治体や国の補助金は費用負担の大きな助けとなります。


