軽量鉄骨造は、地震に強い住宅として注目される一方で、快適性やリフォーム性に関する不安を抱える人も多い構造です。特に戸建て住宅に採用されることが多く、耐震性や耐久性を重視したい人にとっては魅力的な選択肢ですが、「どれほど地震に強いのか」「リフォームの自由度はあるのか」など、判断に迷うケースもあるでしょう。
当記事では、軽量鉄骨造の基本構造やメリット・デメリットを整理した上で、木造や重量鉄骨造との耐震性能の違い、さらに耐震性を高める具体的な方法まで詳しく解説します。住まいの安全性を重視したい人や、将来的なリフォームを見据えて構造を比較検討している人は、住宅選びや建築計画の参考にしてください。
1.軽量鉄骨造とは?
軽量鉄骨造とは、建物の柱や梁などの骨組みに厚さ6mm未満の鋼材を使用した構造のことです。鉄骨造は「Steel(スチール)」の頭文字を取って「S造」とも呼ばれます。
軽量鉄骨造では、工場で生産された部材を建築現場で組み立てる「プレハブ工法」が一般的です。また、「ラーメン工法」と呼ばれる、柱と梁を剛接合して強固な枠を構築する工法も一部で用いられます。重量鉄骨造が6mm以上の鋼材を使用し、大型ビルなどに適しているのに対し、軽量鉄骨造は戸建て住宅や一部の注文住宅などに多く使われる構造です。
1-1.軽量鉄骨造のメリット・デメリット
軽量鉄骨造の住宅は、木造や鉄筋コンクリート造とは異なる特性を持ち、さまざまな利点と注意点があります。ここでは、軽量鉄骨造の主なメリットとデメリットを整理して紹介します。
メリット |
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デメリット |
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軽量鉄骨造は、建築構造の中でも安定性や耐久性に強みを持つ構造の一種ですが、防音対策や断熱性能などの居住の快適性、将来的な間取り変更の自由度には工夫が必要です。建築時には、軽量鉄骨造の特性を十分理解した上で計画を立てるとよいでしょう。
2.軽量鉄骨造の耐震性は高い?
軽量鉄骨造の耐震性は比較的高いとされています。鋼材の柱や梁は強度と粘り強さ(靱性)に優れ、変形しながら地震の揺れを吸収し、倒壊リスクを軽減するためです。また、ブレース構造の導入などにより、耐震性能が強化されている点も特徴です。
現在は建築基準法の改正により、軽量鉄骨・木造・鉄筋コンクリートなどの構造を問わず、震度6強~7の地震でも倒壊しない性能(耐震等級1)を満たすことが義務付けられています。そのため、適切に設計・施工された建物であれば、構造による耐震性の差はそれほど大きくありません。
ただし、建築年により旧耐震・新耐震の違いがあるため、住宅の耐震等級や建築確認申請日、構造躯体の仕様に注意が必要です。さらに、軽量鉄骨は錆に弱い性質があることから、定期的な点検と防錆対策などのメンテナンスが耐震性を維持する上で重要となります。
2-1.木造と比較した場合の軽量鉄骨造の耐震性
軽量鉄骨造は、柱や梁に強度の高い鋼材を使用するため、木造に比べて耐震性が高い傾向にあります。鉄骨は折れにくく、シロアリや腐食の影響も受けにくいため、構造の劣化が起きにくいことも地震に対する強みです。適切なメンテナンスを行えば、木造よりも長期間安心して住み続けられるとされています。
ただし、近年は木造住宅の技術も進化しており、ツーバイフォー工法などでは高い耐震性を実現できるケースもあります。さらに、建築基準法の新耐震基準に適合していれば、木造・鉄骨造を問わず一定以上の耐震性能は確保されているため、一概に軽量鉄骨造のほうが耐震性に優れているとは言い切れないのが現状です。
2-2.重量鉄骨造と比較した場合の軽量鉄骨造の耐震性
重量鉄骨造と比較すると、重量鉄骨造では厚さ6mm以上の鋼材を用いるため、軽量鉄骨造の耐震性はやや劣るとされています。その主な理由は、使用する構造用建材である鋼材の厚みにあります。重量鉄骨造は鋼材が6mm以上と太いため、構造の剛性と耐力が高く、大規模な地震や繰り返しの余震にも耐えやすい構造になります。一方、軽量鉄骨造は3~4mm程度の鋼材が使われることが多く、地震時の変形耐性や耐火性にも一定の制限があります。
ただし、重量鉄骨造の高い耐震性を生かすには、強固な地盤と基礎が不可欠です。重量鉄骨造は建物の重量が大きいため、軟弱な地盤では地盤改良工事が必要になる場合もあり、コストや施工条件には注意が必要です。
3.軽量鉄骨造の耐震性を上げる方法
軽量鉄骨造はもともと耐震性に優れた構造ですが、立地や設計によってはさらなる強化を図ることが可能です。ここでは、軽量鉄骨造の耐震性をより高めるための具体的な工夫や方法を紹介します。
3-1.地震に強い土地に建物を建てる
軽量鉄骨造の耐震性を高めるには、建物そのものだけでなく土地の地盤の強さも重要な要素です。地震に強い家を建てたい場合、地盤が固く安定した自然地形の土地を選ぶことが望ましいでしょう。反対に、盛土や地下水位の高い土地は液状化や不同沈下のリスクがあるため注意が必要です。
土地選びの際は、自治体が発行するハザードマップや古地図、物件周辺の地盤工事履歴などで過去の地形を確認するのもおすすめです。たとえば、周辺に古くからの神社仏閣があるかも1つの目安になります。神社やお寺は、災害の影響を受けにくい場所に建てられてきた傾向があり、その周辺は地盤が安定している可能性が高いと考えられます。土地の地盤が弱い場合は、杭打ちなどの地盤改良で補強することも可能なので、必要に応じて検討するとよいでしょう。
3-2.屋根や外壁は軽い素材を選ぶ
建築会社や工務店で軽量鉄骨造の家を建てる際、建物全体の重量を抑えることでも、軽量鉄骨造の耐震性を高めることが可能です。構造計算上では建物が重くなるほど地震時の負荷が大きくなって倒壊リスクも上がるため、屋根や外壁には軽い素材を選ぶとよいでしょう。
屋根材は重量のある瓦よりもスレートやガルバリウム鋼板が、外壁はモルタルやタイルではなく窯業系や金属系のサイディング材のほうが軽量です。軽い素材を屋根や外壁に使うことで建物の揺れを抑えられ、地震への耐性が向上するでしょう。また、家の中に重い家具や楽器などを置く予定がある場合は、その重量も設計段階で考慮する必要があるため、あらかじめ設計者に伝えることが大切です。
3-3.2階にリビングを置く
軽量鉄骨造住宅の耐震性を高める方法として、リビングを2階に配置する間取りも有効です。リビングは開放的な空間を求めるため、どうしても耐震壁となる壁材の数が少なくなりがちです。リビングを1階に設けると、屋根や2階の荷重を支える壁の配置が限定されやすく、耐震性が低下する可能性があります。
一方、2階にリビングを置けば1階に個室を配置しやすくなり、壁を多く確保できる構造となるため、耐力壁を設けやすく地震時の揺れに対する強度が増します。さらに、2階リビングは日当たり・通風・プライバシー確保にも優れるという利点があります。ただし、2階リビングの間取りを採用する際は、老後の移動や家具の搬入に備えて、将来的な動線や設備対応を考慮した設計にするとよいでしょう。
3-4.耐震リフォームを行う
築年数が経過した軽量鉄骨造住宅では、現行の耐震基準を満たしていない場合もあるため、耐震リフォームが重要な対策になります。特にプレハブ工法で建てられた軽量鉄骨造住宅は、構造に制約があることも多く、住宅を建てたメーカーの仕様に精通するリフォーム業者を選ぶことが成功のカギとなります。ブレースなど構造上の特徴を把握した上で、耐力壁の追加や基礎補強、接合部の補強を行うことで、建物の揺れに対する強度を効果的に高められるでしょう。
また、軽量鉄骨ならではの品質の高い構造材や主要構造部を生かした軽量鉄骨リフォームは、耐震性だけでなく、住まいのデザイン性や快適性も向上させるチャンスです。将来的な安心のためにも、早めの耐震診断と対策を検討しましょう。
まとめ
軽量鉄骨造は、耐震性に優れた構造である一方で、建築年や設計によって性能にばらつきがあります。特に築年数が経過している軽量鉄骨造住宅では現行の耐震基準に満たないケースもあり、安心して住み続けるためには早めの対策が重要です。
軽量鉄骨造の構造特性を踏まえた上で、耐力壁の追加や基礎・接合部の補強などの耐震リフォームを行うことで、地震への備えを強化できます。また、リフォームによって快適性やデザイン性も向上させることが可能です。将来の安全・安心を確保するためにも、まずは耐震診断を受け、リフォーム業者に相談しながら住まいのアップデートを検討してみましょう。


