新耐震基準とは?旧耐震基準との違いや調べ方も解説!

地震大国である日本では、いつどこで大きな地震に見舞われるか予測がつきません。そこで気になるのが、建物の「耐震基準」です。中でも「新耐震基準」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。1981年に導入された新耐震基準は、震度6強~7程度の大規模地震でも人命を守ること、つまり建物が倒壊しないことが基準となっています。

この記事では、新耐震基準の内容や、耐震基準と耐震等級の関係などについて分かりやすく丁寧に解説します。当記事を通して、建物の耐震性に関する正しい知識を身につけ、安心して暮らせる住まい選び、および大切な家族を守るための備えにつなげていただければ幸いです。

 

1.そもそも耐震基準とは?

耐震基準とは、建築物が地震に耐えられるよう、建築基準法によって定められた安全基準のことです。目的は、建物が地震で直ちに崩壊・倒壊するのを防ぎ、建物内の人命を守ることにあります。ただし、耐震基準は建物が地震後も無傷で使用可能であることを保証するものではなく、あくまで最低限の安全を確保するための基準です。

日本では地震のたびに耐震基準が見直されており、1950年の建築基準法制定以来、1981年に「新耐震基準」が導入され、さらに2000年には基準が強化されました。具体的には、地盤に応じた基礎設計や耐力壁の配置バランス、部材接合の強化などが加わり、建物の耐震性の基準が大きく上がりました。

耐震基準は、地震多発国である日本において、命や財産を守るために欠かせない指針となっています。

 

1-1.耐震基準と耐震等級の関係

耐震等級とは、建物の耐震性能を3段階で示す指標です。地震に対する建物の耐久性を評価します。

耐震等級1は建築基準法で定められた最低限の耐震性能を指し、数百年に一度の大地震(震度6強~7相当)にも倒壊しない基準です。耐震等級2は耐震等級1より1.25倍の強度を持ち、学校や避難所など公共施設に求められる基準です。耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の強度を持ち、災害時に重要な拠点となる消防署や警察署に必要とされる最高レベルの耐震性を備えています。

一方、耐震基準は建築基準法に基づき、建物が地震による崩壊を防ぐための最低基準を指します。耐震基準はすべての建物に適用され、命や財産を守ることを目的とした法律的な指針です。これに対して耐震等級は、建物の性能を細かく分類し、比較可能な形で示す評価基準であり、住宅性能表示制度の一環として設けられています。

 

2.新耐震基準とは?

新耐震基準は、1981年に建築基準法が改正された際に導入された耐震基準です。

新耐震基準では、震度6強から7程度の大規模な地震が発生しても建物が倒壊や崩壊しないことが基準であり、震度5程度の地震への対策を前提とした旧耐震基準に比べ、耐震性能が大幅に強化されています。

 

2-1.1981年基準

1981年6月1日に施行された新耐震基準は、それまでの旧耐震基準から大幅な改正が行われました。

しかし、1995年の阪神・淡路大震災では、新耐震基準で建てられた建物でも被害を受けたものがありました。この教訓から、さらに耐震基準が見直されることになります。

 

2-2.2000年基準

2000年基準は、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに改正された建築基準法の耐震基準です。特に木造住宅の耐震性向上が見直されています。

まず、住宅を支える基礎部分では、地盤の状態に応じた設計が義務化されました。これにより、地盤調査が事実上必須となり、不同沈下を防ぐため、適切な基礎形状の選択が必要です。また、同じく2000年施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律」において、施工会社や売主などは、建物の瑕疵に対して10年間の住宅瑕疵担保責任を負います。

次に、柱や梁の接合部には金具の使用が規定されました。この規定により部材の抜け落ちを防ぎます。筋交いや耐力壁の接合部の固定方法が明確化され、地震時に十分な強度を発揮できる仕様が求められました。

さらに、耐力壁の配置に関してもバランスが重要視されました。偏心率という指標が導入され、壁の配置が偏らないよう設計が義務化されています。これにより、特定方向に強度が偏ることによる倒壊リスクが軽減されました。

 

3.新耐震基準と旧耐震基準の違い

旧耐震基準とは、1981年6月1日以前に建築確認申請を受けた建物に適用される耐震基準を指します。旧耐震基準は1950年に制定され、1981年5月31日までに建築確認を受けた建物に適用されています。

旧耐震基準では「震度5程度の地震で大きな損傷を受けないこと」が要件でした。1978年の宮城県沖地震などで大きな被害が発生したことを受け、大幅な改正が行われました。

旧耐震基準の建物は、特に柱や梁の補強が不十分なケースが多く、耐震補強が必要です。なお、新耐震基準を満たしている建物であっても、経年劣化により耐震性能が低下している場合があります。そのため、耐震診断を通じて建物の現状を確認し、必要に応じて耐震補強を行うことが推奨されます。

 

4.耐震基準の調べ方

耐震基準を調べる際には、まず建物の築年数を確認し、1981年6月1日以前か以降かを判断することが一般的です。1981年6月1日以降に建築確認申請が受理された建物は新耐震基準が適用されていますが、一方で完成日だけでは判断が難しい場合があります。

そのため、建物の「建築確認申請日」も確認するとよいでしょう。建築確認申請日は建物の耐震基準を判断する基準となり、建築確認申請が役所で受理された時点で適用される基準が決定します。

特に竣工日が新耐震基準の施行後でも、申請日が施行前であれば旧耐震基準が適用される可能性があります。また、大規模な集合住宅の場合は建築確認申請日と竣工日の間にタイムラグが生じることが多いため注意が必要です。

 

5.耐震基準を満たさない建物はどうなる?

耐震基準を満たしていない建物を所有する際の注意点は、多岐にわたります。

まず、ここで言う「耐震基準を満たしていない建物」とは、主に1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物を指します。現行の新耐震基準を満たしていないため、地震時の倒壊リスクが高いということを認識する必要があるでしょう。例えば、阪神・淡路大震災では旧耐震基準の建物の6割以上が中破から倒壊という深刻な被害を受けました。

最も重要な点は、地震発生時の安全性です。旧耐震基準の建物は、震度6強以上の地震で倒壊する危険性があります。そのため、居住者や利用者の安全確保が最優先課題となります。建物の安全性を確認するためには、まず耐震診断を受けることがおすすめです。耐震診断によって建物の耐震性能が具体的に評価され、必要な補強工事の内容や費用などが明確になります。その結果に基づいて、耐震補強工事を検討することで、建物の安全性を高められます。

耐震補強工事が困難な場合や、建物の老朽化が進んでいる場合は、建て替えも選択肢の1つです。建て替えを行うことで、現行の耐震基準に適合した安全な建物を建てることができます。なお、旧耐震基準の建物は、現在の法律では「既存不適格建築物」という扱いになります。既存不適格建築物は違法建築物とは異なり、建築当時は適法であったものの、その後の法改正によって現行の基準に適合しなくなった建物のことです。既存不適格建築物は、建て替えの際に現行の基準に適合させる必要があります。

 

まとめ

新耐震基準とは、1981年6月1日に施行された建築基準法における耐震基準のことです。

旧耐震基準の改正の背景には、1978年に発生した宮城県沖地震があります。大規模な被害を受けた家屋の教訓をもとに基準の厳格化が行われました。実際に、1995年の阪神・淡路大震災では、新耐震基準に適合した建物の多くが被害を最小限に抑えたことが報告されており、新耐震基準の有効性が証明されています。

また、2000年にはさらに基準が見直され、特に木造住宅の耐震性能向上が図られました。これが2000年基準です。