古民家は耐震性が低い?耐震補強の必要性や方法・費用を紹介

古民家での暮らしは、趣ある佇まいや、現代建築にはない温かみ、日本の伝統を感じられる特別なものです。一方で、気になるのが「耐震性」です。「古民家は地震に弱いのでは?」という不安を抱えている方も少なくないでしょう。古民家は現代の建築基準とは異なる工法で建てられていることが多く、現代の耐震基準を満たしていない場合があります。

当記事では、古民家の耐震性や、耐震補強の必要性や具体的な方法について紹介します。

 

1.古民家は耐震性が低い?

古民家は、築年数や使用されている木材、建築工法などによって状態が異なり、「すべての古民家=耐震性が低い」とは言えません。

伝統構法と呼ばれる工法で建てられた古民家は、現代の「耐震」という考え方とは異なり、「免震」に近い考え方に基づいて建てられています。伝統構法は、建物を地面に固定せず、地震の揺れを受け流すことを目的とした工法です。しかし、現代の建築基準は、基礎をコンクリートで固め、壁や筋交いなどで建物を強固に固定する「耐震」を重視しており、伝統構法の古民家は、この基準を満たさない場合がほとんどです。

また、建築基準法の成立以降に建てられた古民家の中には、外観は古民家風でありながら、構造は現代の在来工法に近いものも存在します。これらの建物は、伝統構法の地震を受け流す仕組みが失われている可能性があり、注意が必要です。在来工法は「耐震」を目的としており、伝統構法とは異なります。

 

2.古民家に行いたい耐震補強工事の方法

耐震補強工事は、古民家の状態や構造、地盤の状態などによって最適な方法が異なります。そのため、専門家による詳細な調査と診断に基づき、適切な補強計画を立てることが重要です。

 

2-1.地盤や基礎を補強する

古民家の基礎は、現代の建築物とは大きく異なる場合が多く、耐震性を向上させるためには適切な補強が不可欠です。古民家では、基礎がない場合や、石場建てと呼ばれる石の上に直接柱を置く形式の基礎がよく見られる傾向です。このような場合、現代の建築基準に合わせたコンクリート基礎を新設したり、既存の基礎を補強する増し打ち工事を行ったりすることで、建物の安定性を高めます。

また、地盤が軟弱な場合、地震の揺れによって建物が大きく傾いたり、沈下したりする恐れがあります。そのため、必要に応じて地盤改良工事を行い、地盤の強度を高めなくてはなりません。地盤改良の方法としては、表層改良、柱状改良、鋼管杭工法などがあり、地盤の状態に適した方法で行います。

さらに、基礎と土台が緊結されていない場合、地震時に建物がずれ動く恐れがあるので、金物などを用いて基礎と土台をしっかりと緊結し、一体性を高め、耐震性を向上させます。床下の湿気は木材の腐朽を招き、建物の強度を低下させる原因となるので、適切な換気で木材の劣化を防ぎ、建物の寿命を延ばすことも重要です。

 

2-2.柱の補強をする

柱は建物を支える重要な構造部材であり、地震時の倒壊を防ぐためには適切な補強が不可欠です。柱の根元が腐朽している場合、部分的に新しい木材で継ぎ足したり、柱自体を新しいものに交換したりする工事を行います。

また、柱と梁の接合部などに補強金物を取り付けて接合部の強度を高め、地震時の柱の抜け落ちを防ぎます。柱と柱の間に壁を設け、建物の水平方向の強度を高めるのも有効です。

 

2-3.壁の補強をする

古民家の壁は、土壁や漆喰壁など、現代の壁材と比べて強度が低い場合が多く、地震時の倒壊を防ぐためには適切な補強が必要です。

壁の補強方法としては、まず、既存の壁に構造用合板などを重ね張りして、壁の強度を高める方法があります。この際、壁の中に筋交いを追加することで、耐震性をさらに向上させられます。

また、耐力壁と呼ばれる、地震の力に抵抗する能力の高い壁を新たに設置するのも有効です。耐力壁は、柱と柱の間に筋交いを入れ、構造用合板などを張ることで作られます。

さらに、土壁の場合は軽量の素材に交換すれば、建物全体の重量が軽減し、地震時の負担を減らす効果も期待できます。

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2-4.屋根を軽量化する

古民家の屋根は、重い瓦葺きの場合が多く、地震時に建物にかかる負担が大きくなります。そのため、屋根を軽量化することで、耐震性を向上させられます。

屋根の軽量化方法としては、瓦を軽量瓦や金属屋根材などに葺き替える方法が一般的です。軽量瓦は、従来の瓦と比べて重量が軽く、耐震性にも優れています。金属屋根材は、さらに軽量で、耐久性や防水性にも優れているため、近年多く用いられています。

屋根の軽量化を行う際には、建物全体のバランスが崩れないよう注意が必要です。たとえば、屋根を軽くしすぎると、風による揺れが大きくなる場合があります。専門家と相談し、適切な方法を選択しましょう。

 

2-5.腐食やシロアリへの対策を行う

古民家は、長年の風雨や湿気、シロアリなどの被害により、木材が腐食している場合があります。腐食した木材は強度が著しく低下しており、地震時の倒壊リスクを高めます。そのため、耐震補強工事と併せて、腐食やシロアリへの対策を行うことが重要です。

具体的には、まず、専門家に調査を行ってもらい、腐食やシロアリの被害状況を把握しましょう。その上で、腐食した木材の交換や補強、防腐・防蟻処理などを行います。特に、土台や柱の根元など、重要な構造部材の腐食は、建物の安全性に大きく影響するため、重点的に対策を行う必要があります。定期的な点検と適切なメンテナンスを行って、腐食やシロアリ被害を未然に防ぐことが大切です。

 

2-6.ダンパーを設置する

制震ダンパーの設置は、古民家の揺れを抑えながら耐震性向上を図れる補強方法です。制震ダンパーは地震時の振動エネルギーを吸収し、建物の変形や損傷を軽減する役割を持ちます。

古民家は仕口や継手を用いた伝統工法で建てられることが多く、構造的に柔軟性が高い点が特徴です。制震ダンパーは柱や梁に取り付けることで揺れの吸収効果を発揮し、耐力壁を過度に増やさずに補強できるため、開放的な空間や意匠性を維持しやすくなります。

耐震補強と制震対策を組み合わせることで、古民家の魅力を残しながら安全性向上を図ることが可能です。適切な設計と施工のためには、耐震診断を踏まえた専門家への相談が重要です。

 

3.古民家の耐震補強工事の費用相場

古民家の耐震補強費用は、建物の状態や規模、築年数、補強内容などによって大きく変動するため、一概にいくらとは言い切れません。しかし、一般的な傾向として、現代の住宅に比べると高額になる場合が多いです。

改修場所別の費用は、基礎の補修が20万~40万円程度、壁の補強が150万~250万円程度、屋根の軽量化が150万~350万円程度が目安となります。これはあくまで一例であり、たとえば基礎の劣化が著しい場合は、基礎の補強だけで数百万円かかることもあるでしょう。また、壁の補強においても、使用する材料や工法によって費用は大きく変わります。屋根の軽量化では、瓦の種類や屋根の面積によって費用が変動します。

築40~60年の古民家の場合、耐震補強費用の目安は150万~250万円程度です。築年数が古くなるほど建物の劣化が進んでいる可能性が高く、大規模な補強工事が必要になり、費用が高くなる傾向にあります。

上記の費用はあくまで目安なので、複数の業者から見積もりを取り、比較検討するようにしてください。

 

3-1.古民家の耐震補強は補助の対象となる場合も

古民家の耐震補強工事は、多くの場合、自治体の補助金制度の対象となる可能性があるのでチェックしましょう。築年数が古い古民家は、現行の耐震基準を満たしていないことが多く、耐震性を向上させるための工事に対して、各自治体が独自の補助金制度を設けているケースがあります。

たとえば、東京都では東京都耐震ポータルサイトが公開されており、耐震化助成制度のページで各区市町村の助成制度を確認できます。

参考:東京都耐震ポータルサイト「1.耐震化助成制度」

補助を受けるためには、いくつかの条件を満たさなくてはなりません。たとえば、耐震診断を受け、耐震評点が一定の数値を満たしていないことや、自治体が指定する耐震改修計画に基づいて工事を行うことなどが挙げられます。また、補助金の申請は、工事着工前に行う必要がある場合がほとんどです。事前に自治体の担当窓口に問い合わせ、詳細な条件や申請方法を確認することが大切です。

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4.古民家の耐震診断を行う方法

古民家の耐震性を正しく把握するには、専門的な耐震診断の実施が必要です。耐震診断は地震時の倒壊リスクを客観的に評価し、補強工事の必要性や優先順位を判断するための基礎資料となります。

ここでは、古民家の耐震診断を行う方法について解説します。

 

4-1.必要書類を用意する

耐震診断を円滑に進めるために、事前に建物に関する書類を整えておきましょう。

具体的には建築確認済証や登記簿謄本などの建物基本情報に加え、外観や室内の現況写真、自治体が指定する申請書類などが必要になる場合があります。これらの資料は建物の構造や築年数、改修履歴を確認する判断材料として活用されます。

自治体によって提出書類の内容が異なるため、事前に窓口や公式サイトで確認し、不足のないよう準備することが望まれます。

 

4-2.自治体指定の第三者機関に依頼を行う

耐震診断は建築士など専門知識を持つ第三者機関へ依頼しましょう。

多くの自治体では登録された耐震診断事務所や建築士事務所を公表しており、所有者はその中から依頼先を選択します。専門機関による診断は客観性が高く、補助制度の対象となる場合もあるため、信頼性の確保につながります。依頼時には建物の図面の有無や過去の増改築の履歴などを共有すると、診断の精度向上が期待できます。

 

4-3.一般診断もしくは精密診断を受ける

耐震診断には主に一般診断と精密診断の2つの方法があります。

一般診断は耐震改修の必要性を大まかに判断する目的で行われ、内外装を大きく解体せずに調査する点が特徴です。一方、精密診断は部材や接合部の状態まで詳細に確認し、補強設計の最終判断に用いられます。

一般診断の結果を踏まえて精密診断へ進むことで、過剰な改修や不要な費用の発生を抑えながら合理的に対策を検討できます。

 

4-4.総合評点から4段階の評価を受ける

耐震診断では上部構造評点と呼ばれる指標に基づき建物の安全性が評価されます。

一般的な基準では評点1.5以上は倒壊しない水準、1.0以上1.5未満は一応倒壊しない水準、0.7以上1.0未満は倒壊の可能性がある水準、0.7未満は倒壊の危険性が高い水準と判定されます。国の目安は1.0以上ですが、安心して長く住み続けるためには1.5以上を目指すことが望ましいとされています。

診断結果をもとに補強計画を検討し、必要に応じて自治体の支援制度を活用するとよいでしょう。

出典:東京都耐震ポータルサイト「STEP1 耐震診断」

 

5.古民家の耐震補強を行うときの注意点

古民家の耐震補強では、建物特有の構造や履歴を踏まえた慎重な判断が求められます。

古民家は現代住宅と異なる工法や材料で建てられている場合が多く、一般的な耐震補強の方法をそのまま適用すると、十分な効果が得られない可能性があります。耐震診断の精度や補強工事の適切性は、図面の有無や増改築の履歴、構造の特徴によって大きく左右されます。安全性を高めるためにも、専門家による詳細な調査と計画的な改修を行いましょう。

 

5-1.伝統工法で建てられた古民家の場合耐震診断が難しくなる

伝統工法の古民家は構造特性が現代住宅と異なるため、耐震診断が難しくなる傾向があります。

継手や仕口による木組み構造や石場建てなどの特徴は、大きな変形性能を持ち地震の力を分散するメリットがありますが、壁量計算など現代の基準だけでは性能を正確に評価しにくい点が課題です。一般的な在来工法の診断手法を単純に当てはめると、建物の揺れ方や補強の効果を誤って判断する恐れがあります。

伝統構法に精通した専門家へ依頼し、適切な評価方法を用いることが大切です。

 

5-2.図面がない古民家の場合正確な耐震診断が難しくなる

古民家では建築当時の図面が残っていないケースが多く、正確な耐震診断が困難になることがあります。

図面が不足している場合は柱や梁の配置、接合部の仕様などを現地調査で確認する必要がありますが、壁や床を部分的に開口しなければ把握できないことも少なくありません。非破壊調査のみでは構造の全体像を把握できず、推定による診断となる場合もあります。

診断精度を高めるためには、築年数や改修履歴など建物に関する資料を可能な限り集めておくことが大切です。

 

5-3.増改築が繰り返されている場合も正確な耐震診断が難しくなる

増改築が重ねられた古民家は、構造の一体性が低下し耐震診断が難しくなる傾向があります。

増築部分は既存建物と見た目上は一体でも、構造的には独立している場合が多く、補強範囲の判断を誤ると十分な耐震性能を確保できない可能性があります。さらに改修履歴の資料が残っていない場合は、補強すべき箇所の特定が困難になります。

耐震補強を計画する際は、現況調査を丁寧に行い、必要に応じて複数の専門家の意見を参考にしながら対策を検討することが大切です。

 

6.伝統工法で建てられた古民家の耐震診断方法はある?

伝統工法の古民家には専用の耐震診断方法があり、通常の木造住宅とは異なる調査が行われます。

伝統構法の建物は揺れを分散する柔構造の性質を持つため、壁量計算中心の一般診断だけでは耐震性能を十分に評価できない場合があります。そのため、全国古民家再生協会による古民家再生総合調査報告書の作成を通じて、建物全体の状態と耐震性能を総合的に把握する方法が用いられています。

調査では、伝統耐震診断、古民家鑑定、古民家床下インスペクションの3つの調査結果がまとめられます。古民家鑑定では目視調査により建物の劣化や構造の特徴を確認し、床下インスペクションでは専用ロボットなどを用いて蟻害や腐朽の有無を調べます。さらに伝統耐震診断では、交通振動や風などによる微細な地盤振動と建物の揺れを同時に測定し、振動特性を解析して地震時の挙動を推定します。

一般社団法人全国古民家再生協会の支部などで申し込みが可能で、費用は目安として約50万円程度、調査対象は築50年以上の住宅とされています。診断結果は補強計画の立案や安全性向上の判断材料となるため、伝統工法の古民家では専門的な診断を受けることが大切です。

出典:全国古民家再生協会「古民家の活用をお考えの方(古民家再生総合調査)」

 

まとめ

古民家は、築年数や建築工法によって状態が異なり、一概に耐震性が低いとは限りませんが、現代の建築基準と比較すると、補強が必要となる場合が多いです。特に、伝統構法と呼ばれる工法で建てられた古民家は、地震の揺れをいなす「免震」の考え方に基づいており、現代の「耐震」基準では評価が低くなる傾向があります。

耐震補強工事を行う際には、事前に専門家による耐震診断を受けることが重要です。診断結果に基づき、地盤や基礎の補強、柱の補強、壁の補強、屋根の軽量化などの工事が行われます。